備忘録:戦争イメージ

実際は、もし、憲法が改正されて、日本が交戦権を回復したとしても、兵営へのビラ撒きのごとき直接行動こそ厳しく取り締まられても、それ以上の言論統制は案外ないかもしれない。ベトナム戦争時のアメリカのように。また現在では、先進国で徴兵制を採用する国は少ない。戦争は、高度に技術化され、プロのお仕事としたほうが効率もよい。そうだとすれば、戦後ずっと日教組が叫んできたごとき、教え子が戦場へ送られる事態など生じようがない可能性が高い。銃後の任務も、民間業者へ請け負わせたほうが義務的強制よりも堅実かもしれない。
 そうして日本へは火の粉も飛んでこない戦場限定で戦争は完結する。砲火は交えられ、犠牲者も双方に多少は出る。しかし、遺族には手厚い保障がされる。殉職した警官や消防士と同様、狂信的ナショナリズムなどは全く臭わない、ごくあたりまえの犠牲者への敬意が、マスメディアを通じて国民一般から捧げられる。日本国家はもうこれくらいには成熟し終えていないか。
 やがて短期間で戦争は終わり、経済や国際的威信において、皆が明瞭な事態好転を実感できる成果がもたらされるかもしれない。
 さあ、どうだろうか。こんな「戦争」に反対すべき理由を、普通に生活している国民一般を説得できるまでに組み立てられる人が果たしているだろうか。
浅羽通明天皇反戦・日本』幻冬舎、「あとがき」)