切り抜き:「足ることを知る」

死刑囚の一覧を見ていたら、武富士放火殺人の人がいて、SFCGの社長のことを考えた。「餓鬼」食欲は満ちることがあるが、金銭欲はそれがない。そして「高瀬舟」をまた読んだ。
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庄兵衛はただ漠然(ばくぜん)と、人の一生というような事を思ってみた。人は身に病があると、この病がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食ってゆかれたらと思う。万一の時に備えるたくわえがないと、少しでもたくわえがあったらと思う。たくわえがあっても、またそのたくわえがもっと多かったらと思う。かくのごとくに先から先へと考えてみれば、人はどこまで行って踏み止まることができるものやらわからない。それを今目の前で踏み止まって見せてくれるのがこの喜助だと、庄兵衛は気がついた。
 庄兵衛は今さらのように驚異の目をみはって喜助を見た。この時庄兵衛は空を仰いでいる喜助の頭から毫光(ごうこう)がさすように思った。
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